このたび,2001年の第1回,2003年の第2回に続き,第3回大学非常勤講師実態調査アンケートが出版されることになりました.今回は,調査に参加した組合数も増え,アンケート回収数も倍増し,更には英語標記も加わって,一層充実したものになりました.
前回アンケート出版後,京滋地区私立大学非常勤講師組合と阪神圏大学非常勤講師労働組合が2004年3月に合併して関西圏大学非常勤講師組合になりました.この大学非常勤講師運動の流れは全国に広がっています.2006年10月15日には,東海圏大学非常勤講師組合が,同年10月22日には,大学等非常勤講師ユニオン沖縄が,結成されました.今回の実態調査に福岡ゼネラルユニオンが参加していることも,この流れを象徴していると思います.
その一方で,大学非常勤講師を取り巻く環境も大きく変わりました.各国立大学が独立法人化され非常勤講師も国家公務員からパートタイム労働者になりました.それとは対照的に,外国語科目等のアウトソーシングが大学にも広がっており,いわゆる「偽装請負」が,大学非常勤講師にとっても問題となりつつあります.更にLEC東京リーガルマインド大学の様な大学とは到底呼べない実態の「大学」が出てくるなど,新たな労働問題も生じています.
この状況下で大学非常勤講師実態調査アンケートが出版されることは,様々な意義があります.まず第一に,各大学との団体交渉の際に貴重な資料として活用でき,組合にとっては大きな武器になります.非常勤講師は大学の内部では機械の歯車の様に扱われ,機能しているが決してその存在を認識されない状態ですから,その姿を目に見えるものにし,その声を聞かせるという点で,この実態調査アンケートは必要不可欠だと言えます.又非正規雇用と正規雇用の間の待遇格差を問題にし,同一価値労働・同一賃金を求める,パートタイム労働者運動全般の中に,大学非常勤講師問題を位置づける為の資料となるでしょう.
同時にこの実態調査アンケートは,大学非常勤講師自身が,パートタイム労働者としての自分達の権利をよく知らないでいる現状をも映し出しています.例えば,労災保険が非常勤講師にも適用されることや,年次有給休暇制度がある大学が存在することを知っている専業非常勤講師は,4人に1人程度であることを,このアンケートは明らかにしています.従って,このアンケートは大学非常勤講師自身にとって,労働者としての自分達の権利に関する無知を映し出す鏡とも,なり得るでしょう.いずれにせよ大いに活用すべきものであることは確かです.
最後に,過去3回の実態調査アンケートを殆ど独力で完成してくださった,関西圏大学非常勤講師組合ゼネラルユニオンの遠藤礼子さんへ,感謝申し上げます.長い間,本当にご苦労様でした.
そして,このたび,第3回の調査を2005年度に行いました.今回は,関西圏大学非常勤講師組合 (京滋地区と阪神圏が2004年に合併),首都圏大学非常勤講師組合に,University Teachers Union,NUGW 東京南部,ゼネラルユニオン,福岡ゼネラルユニオンが加わり,更に大きなとりくみとなりました. 前回との大きな違いは,従来の郵送での回収に加えて,インターネットでの回収を行ったことと,英語版を作成したことです.このことで,前回の倍以上の回答が集まりました.回収数は,インターネットからのものが,630名,郵送・手渡しによる回収381名,合計1011名です.
今回は報告書も,日本語と英語の2言語表記としました.自由記述は,本人が掲載不可としたものを除いて,原則無編集でそのまま掲載しましたが,大学名や個人名はすべて伏せ字としました.自由記述は日本語と英語で書かれたものはもとの言語のまま掲載し翻訳はしていません.巻末の付録には,非常勤講師関係の統計データの最新のものなどを掲載しました.
アンケートの実施と報告書の作成にあたり,多くの方にご協力いただきました.この場を借りてお礼申し上げます.そして,アンケートに回答してくださった非常勤講師の皆様に感謝します.