大学教育研究センター長より,各語学教科集団代表に 「2004.4より非常勤講師時給が500円/600円賃下げすることになったので,非常勤講師に伝えるように」 という通知が出た.その後各語学教科集団代表は,非常勤講師に,メールや文書などでそれを通知し,その際,ドイツ語教科集団代表は,賃下げの理由を,文科省からの予算カットとしていた (表向きの理由は文科省からの予算カットであったことは,11・16団交で,総務部長の認めるところ).
実際,この当時「非常勤講師給ゼロ査定」というデマが全国に広まり,神戸大学他いくつかの大学が,その噂を元に,非常勤講師給の賃下げを決定した.しかし,その後,非常勤講師給の予算は出ることになり,非常勤組合の追求と文科省からの指導によって,賃下げを決定した大学のうち,多くの大学はその後撤回した (神戸大学では断行).
神戸大学非常勤講師給賃下げの内容
5800→5200円 (大卒後経験年数20年3ヶ月以上) 年30週として,年36000円/コマの減収
5100円→4600円 (大卒後経験年数20年3ヶ月以下) 年30週として,年30000円/コマの減収
2004.10.7
フランス語教科集団代表より,フランス語非常勤講師に以下の通知が出される
○ 2006年度からの全学教育カリキュラム更新に伴って,2005年度から見直しが始まっている.
○ フランス語の履修者が減少している
○ それで,現在非常勤講師が担当している総コマ数は38コマ (前後期各19コマ) だが,来年は27コマとなってしまった
○ 9名のうち7名の担当コマ数を,現在4コマ (前後期各2コマ) のところ,来年は3コマ (前後1コマ,後期2コマ) とする.
2004.10.20
関西圏大学非常勤講師組合より,神戸大学へ,支部結成の通知と,団交の申し入れを行なう.主な要求項目は以下の通り:
○ 労基法違反の是正
○ フランス語非常勤講師への減ゴマの撤回
○ 4月に行なわれた賃下げの撤回
○ 全学教育カリキュラム更新の方針の公開
[労基法違反について]
神戸大学は,開口一番 「何が労基法違反なのか理解しがたい」 と発言するなど,無知ぶりを暴露したが,組合の追及により:
○ 非常勤講師に関わる就業規則は存在するが,周知徹底どころか,誰も目にしたことがないし,存在すら知らない
○ 非常勤講師の有給休暇の制度は,就業規則に労基法どおりにあるが,非常勤講師には適用していない
○ 産休の制度はあるが,誰も知らない
といった数多くの法違反が明らかになった.また,あわせて,専任教職員には,有給の産休が保障されているのに,非常勤講師の産休が無給であることは,パート労働者とフルタイム労働者の均衡待遇を定めるパート労働法に違反しているが,それは団交の席で総務部長も認めるところである.今すぐできることとして,1週間以内に就業規則を控室に常備し,そのことおよび非常勤講師にも労災が適用されることを掲示することで合意した.
[減ゴマ撤回について]
大学からのフランス語の減ゴマの説明は以下の通り
○ 2006年以降の全学共通教育のカリキュラム更新が検討されている
○ 2004・7に,それに向けて,神戸大学全学教育等専門委員会より「報告」が出された.
○ 「報告」には 「(1) 内容豊かなカリキュラムの編成 (2) 大規模授業の解消による教育効果の向上 (3) 学習環境の改善」が基本課題とされている
○ 非常勤講師の採用については,「報告」には以下の通り記されている.
○ この「報告」にある方針に基づいて,大学教育研究センター長と,教科集団代表とが協議して,フランス語非常勤講師の減ゴマを決定した.したがって,それを撤回することは出来ない.
非常勤講師の採用については「報告1」に述べた通り,
(1) 全学的な支援を得てもなお担当教員が不足する講義科目の開講
(2) 学内に必要とする専門分野の教員を見出し得ない科目の開講
のために採用することを基本とする.(1) に関わる総時間数については,総開講必要時間数と暫定値を基本とする担当時間数の差 (負の場合は0) とする.
非常勤講師及びTAの採用は,大学教育研究センター及び「機構」において定める.
平成17年度の非常勤講師担当数については,[平成16年度非常勤講師担当数 - 総開講必要時間数から暫定値を基本とする担当時間数の差] を勘案し,減少を図る.個別の検討は大学教育研究センター長に委ねる.(注:分かりにくいが,要するに専任の担当コマ数を増やして非常勤を削減するということ)
大学はのこのように,経過を説明しただけで,何を追及しても 「大学教育研究センター長と,教科集団代表が決めたことだ」 と言うだけであった.
組合は,非常勤講師の減ゴマ (= 専任教員の担当コマ数を増やして無理な労働強化をし,非常勤講師の生活不安・雇用不安をあおって非常勤講師に莫大なストレスをかける) をしても,わずかばかりの非常勤講師給の出費を減らすことは出来るだろうが,教育効果や学習環境が改善するどころか悪化することは明白であるということを主張した.
大学は (非常勤講師担当数の削減は) 予算の問題だけではない,と主張していたが,専任の労働強化と非常勤講師の生活を脅かすことが,どのように,教育効果や学習環境が改善に結びつくのかという問いに対して,何一つ答えることはできなかった.次回団交へ持ち越し.
[500円/600円の賃下げについて]
大学の説明は以下の通り
○ 昨年までは,予算のしばりがあったが,それがなくなったので,非常勤給を見直した.非常勤講師の職務と,常勤教員の職務の内容比較をすると,教育に関しては同様だが,常勤教員は,それ以外に,研究と雑務(管理運営)がある.このことをふまえて,パートタイム労働法に基づいて,給与を定めた.常勤講師の週あたりの給与を (週労働時間の) 40時間で割ったのが,時間給単価としては一番均衡している.しかし,それではあまり安すぎるので,この額になった.パートタイム労働法に定める,フルタイマーとパートタイマーの均衡待遇を実現するために行ったのがこの賃下げである.
この説明には,一同唖然としたが,組合からは均衡待遇/均等待遇というのは,職務評価をして初めて検討できるもので,単に時間で割ればいいということではない,という基本的な情報を提供し,このような説明は笑い話にもならないということを指摘した.次回団交へ持ち越し.
ちなみに,常勤講師 (42歳) の年収を推定600万円とし,常勤講師の職務には,教育・研究・雑務があるので,そのうちの教育を50%とするならば,教育労働に関する年収は300万円,通年5コマ担当しているとして,1コマあたり年60万円.1コマ年30回として,1回2万円 (時給1万円) となる (各種手当,研究費,社会保険,退職金等を入れて計算すればもっと高くなるがここでは省略).均衡待遇の計算というのはこういうようにやるものである.非常勤講師と常勤講師の均衡待遇/均等待遇が実現していない,とういことは,周知の事実であり,実現のためには,非常勤給を引き上げなければいけないのは当然である.「均衡待遇実現のために非常勤給を賃下げした」 と主張するとは神戸大学の無知も甚だしいと言わざるを得ない.
[次回団交]
2週間後の30日に第2回の団交が設定された.