私たち京滋地区私立大学非常勤講師組合は、結成以来同志社、立命館、龍谷、京都産業の四大学と交渉を重ねてまいりました。そうした活動の中で私たち非常勤講師の仕事や生活の実態、実感が一般社会はもちろんのこと、私たちを雇っている大学当局や専任教員などの関係者にも、ほとんど知られておらず、改善すべき問題として認識されていないことを痛感いたしました。それは当事者である非常勤講師自身が、1年後の雇用の見通しが立たないという、極度に不安定で弱い立場にあるため、理不尽な状況におかれながら声をあげることが非常に難しいという状況が長年続いてきたことによるものであり、大学は、言葉は悪いですが、その弱みにつけこんで、都合よく非常勤講師を使い捨て、問題の所在を顧みることがなかったと言えるのではないでしょうか。
このアンケートは私たち非常勤講師組合が加盟している京滋地区私立大学教職員組合連合のご尽力と経済面を含めた全面的ご協力によって実現しました。問題の所在を広く認識してもらう非常勤講師のおかれた過酷な状態を改善するためには、まず実態を明らかにするための調査を行う必要がありましたが、不安定で多忙な仕事に追いまくられ、時間も資金も乏しい非常勤講師の集まりである当組合単独では、それを実現させることは不可能だったと思います。
アンケートの項目の設計は主として非常勤講師組合に任され、1999年1月末頃から、幾つか準備草案を作りはじめました。1999年度書記長が精力を注いで作成された草案が基本となり、加除や細部変更はありましたが、最終案まで其の骨子は引き継がれました。
2月の執行委員会から6月中まで、非常勤講師組合執行委員たちの討議と、京滋私大教連執行部の意見とにより次第に最終案に近づき、夏休み前にアンケート項目が完成しました。
印刷が出来て実際に配布をはじめたのは11月にずれ込みました。回答依頼文一葉と返信封筒もつけ、5000部印刷し、2000年1月末を締め切りとして、配布を開始しました。配布の方法は、京産大・龍谷大・同志社大・立命大の講師控室のメールボックスへの投函、デスク上への山積み、などによるもので、私大教連傘下の諸大学の労組にも協力していただきました。また阪神圏大学非常勤講師労働組合にも協力を求め100部ほど送りました。
2000年2月初頭で188通返送がありました。しかし、なお私大教連や非常勤組合執行委員の手元に500部ほど残がありましたので、再度の締め切りを2月末として主に郵送で配りきりました。
その中には日本音楽家ユニオン関西地方本部の協力 (150部) と造形芸術家貴志カスケさんの紹介による協力 (約10部) が含まれています。美術・音楽の領域は非常勤講師依存率が最も高くかつもっとも賃金が低いのですが、なかなか講師の声が届いてこない分野でしたが、これによってなにほどか声が聞かれるのではないかと期待されます。また女性学教育ネットワークにお願いして会員中の非常勤出講されていそうな方々 (約20部) にも送らせていただくことができました。
こうして回答数は3月8日まで最終的には277となりました。
アンケート原票のデータベースへの入力は、業者に発注し、3月中には納品を受けましたが、業者が入力の判断に迷ったところが多くそれの処理と、データの集計法に時間が必要で、前期授業が始まると非常勤講師は時間の余裕が無くなるため、 集計作業は夏期休暇にずれこみ、年度末の時期になって、ようやくまとめの作業が完了しました。その後、自由記述の処理などに予想外の時間がかかり、2001年7月発行となったという次第です。
以上のような事情でずいぶん遅くなってしまいましたが、報告をまとめることができました。このような規模での非常勤講師の調査は全国ではじめての試みではないかと思います。この貴重な報告を、今後の対大学交渉をはじめとする組合活動に役立てていきたいと考えております。
全面的にバックアップして下さった京滋地区私立大学教職員組合連合に、そして配布にご協力いただいた各大学教職員組合、日本音楽家ユニオン関西地方本部、造形芸術家貴志カスケさん、女性学教育ネットワークに、そして最後に時間的にも経済的にもゆとりの乏しい中、アンケートの意義をご理解下さって、貴重な意見をお寄せ下さいましたすべての回答者の皆さんに、心より御礼申し上げます。