非常勤の声

『非常勤の声』号外 神戸大学特集

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2004年11月24日発行

関西圏大学非常勤講師組合
〒542-0012 大阪市中央区谷町7丁目 1-39-102 大私教気付
委員長:新屋敷 健
郵便振替 00950-2-203528
URL: http://www.hijokin.org
E-mail: infoアットhijokin.org

神戸大学は,時代錯誤の非常勤講師給賃下げと,教育を破壊する非常勤講師削減計画を今すぐ撤回せよ!

神戸大学では,今年の4月より,全ての非常勤講師給が約10%引き下げられ,さらにフランス語の非常勤講師7名に,先日,来年度0.5コマの減ゴマが通知されました.この減ゴマが断行されれば,通年2コマ担当してきたフランス語非常勤講師の場合,来年の神戸大での収入は昨年の2/3になってしまいます.そして,この賃下げ・減ゴマいずれに対しても,何ら合理的な理由は示されていません.

この不当な賃下げと来年度の減ゴマ提案の撤回,そして,再来年以降の更なる雇い止め・減ゴマの予告を撤回させるため,先日11月16日関西圏大学非常勤講師組合 (以下,組合) と神戸大学の初めての団体交渉が開催されました.

団体交渉の席で,神大当局は,まず開口一番 (労基法違反の是正を要求する組合に対して) 「何が労基法違反なのか理解しがたい」と発言し無知ぶりを暴露しましたが,組合の追及で神戸大の労基法違反 (の少なくとも一部) は明らかになりました.

フランス語減ゴマ提案に関しては 『平成18年度以降の全学共通教育について (報告2)』 (以下「報告」) に基づいて,大学教育研究センター長と教科集団代表とが協議して決定したものだ,という説明を繰り返すだけでした.実はその「報告」には,専任担当コマ数増による非常勤講師担当コマ数の削減が記されていますが,それは「報告」にある基本課題* に逆行するものではないのか,という組合の追求に,当局は何らまともな回答をすることができませんでした.

賃下げに関しては,非常勤講師の職務と,常勤教員の職務の内容を比較し,パートタイム労働法に基づいて,賃金を定めた,という奇想天外な説明があり,組合側一同を唖然とさせました.パートタイム労働法 (1993) には,パートタイマーとフルタイマーの処遇の均衡 を確保する努力義務が規定されていますが,均衡待遇** を実現するために,パートタイマーの賃下げを行ったなどという理屈は,笑い話にもなりません.

大学の外に目をむけても,今や,労働者の3人に1人はパートタイムや派遣などの非正規労働者であり,非正規労働者と正規労働者 (正社員) との均等待遇を実現することは,緊急課題となっており,来年には法改正が予定されています.非正規=安くて便利な使い捨て労働,と考えていれば良い時代はとっくに終わっています.「パート労働法に基づいて賃下げを行った」と主張する神戸大の論理は,時代遅れであるだけでなく,完全に破綻しています.

専任教員の増坦により労働環境を悪化させ,非常勤講師の減ゴマや雇い止めを行って雇用不安をあおることは,神戸大学の教育環境を悪化させることにしかつながりません!

神戸大学は,そのような犠牲を払って,わずかばかりの金を浮かせて,一体何をしようというのでしょう?国からくるお金 (運営交付金) には限りがあり,支出の無駄をなくす努力をするのが必要なのは当然です.しかし,非常勤講師はなくすべき無駄ではありません

それに国会で文科副大臣が (非常勤講師給が) 「法人化になった途端にどんと下がるというようなことはあり得ないことであります.そんなことがあってはならぬ」と言っているのを無視して,賃下げを断行し,他の事に使って良いのでしょうか?

非常勤講師のみなさん,専任教員のみなさん,「上」が決めたことだから,とあきらめていませんか?これはフランス語だけの問題でも,非常勤講師だけの問題でもありません.

組合未加盟の非常勤講師は非常勤講師組合に加盟して,あなたの仕事と生活,そして大学の教育を守るための闘いに参加してください!専任教員の方も賛助会員となってご支援下さい!

次回団交は11月30日 (火) 5:30〜事務室4階特別会議室 (事務室の入り口は5:30に閉鎖.総務078-803-5050に通用口を開けてもらって下さい).非組合員の参加も歓迎します.団体交渉は憲法及び労働組合法で保障された,労働者と使用者が対等に交渉できる場です.陰で愚痴っていても声は届きません,この機会にあなたの生の声を神戸大当局に直接ぶつけて下さい!

*「報告」にある基本課題 (1) 内容豊かなカリキュラムの編成 (2) 大規模授業の解消による教育効果の向上 (3) 学習環境の改善

** 常勤講師と非常勤講師の均等待遇の試算:常勤講師 (42歳) の年収を600万円 (推定) とし,常勤講師の職務 (教育・研究・雑務) のうちの教育にかかる職務を50%とするならば,年収の50% (300万円) は教育労働に対して支払われていることになる.通年5コマ担当しているとして,1コマあたり年60万円.1コマ年30回として,1回2万円 (時給1万円) となる (各種手当,研究費,社会保険,退職金等を入れて計算すればもっと高くなるがここでは省略).組合の調査による非常勤講師の平均年齢は42.4歳.

(副委員長・神戸大件担当 遠藤礼子)

交渉で考える大学教育の役割

すでに多人数クラスの授業形式自体が時代にそぐわなくなり,機能不全を起こしていることは明白である.一から多への一方通行のコミュニケーションは教えられたこと以上に発展する余地がない知識の縮小再生産をもたらすだけ,つまりは写り悪いコピーを作るだけである.授業中に学生に発言を求めても,ディスカッションどころか,必要以上のことをしゃべることはない.それは小中高の集団主義的な教育環境の中で,言葉が封殺されてきたからであり,大学でもその状況はほとんど変わらない.ここに語学力以前のコミュニケーションの根深い問題があるのだが,学生が単位を取ることだけに終始し,発展的に学ぼうという意欲を殺いでしまうのは,このような授業形式に負うところが大きい.

ましてや相互的なコミュニケーションが必須である語学の授業である.さらにひとつのクラスに多くの学生を詰め込もうという計画は愚の骨頂としか言いようがない.このような教育サービスの低下は,何よりも授業料を払っている学生の反感を買うだろう.大学側が経営の効率という経済的な原理を持ち出すのならば,学生という多様なニーズを持った消費者の立場はどうなるのか.

学生は昔のような単純な世界の中には生きていない.個々人は決して普遍化できない複雑なコンテクストの中を生きている.この大学が謳っている「国際化」とはこのような現実を踏まえることに他ならない.彼らの現実に対応するためには,大学は多様な教師による多様な授業を保証することしかない.それに逆行しようという大学側の暴挙を見るかぎり,教師や学生が置かれている現実には全く関心がないようだ.これからの大学は生き残るために,学生たちにアピールする「売り」を考えていかなければならないはずである.その最前線にいる教師の意見をもっと真摯に受け止めたらどうだろうか.

同時に私たちは何につけこまれているのか考えなければならない.大学側との交渉において考えさせられることは非常に多い.大学に持ち込まれたネオリベの論理が図らずも大学教師に一種の説明責任を要求している.私たちと学生の関係,教師のあいだの関係,そして私たちの研究と今直面している現実との関係について.もはや従来の教養という概念を自明のものとして,その上に漫然とあぐらをかいてはいられない.私たちは労働力の安全弁でもないし,都合の良い使い捨ての駒でもない.私たちは自らの存在と役割を再定義しつつ,それを主張しなければならない時期が来ているようだ.

(神戸大学フランス語非常勤講師 E.T.)


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